AI活用で『子どもと向き合う時間』を増やす放課後等デイサービス
「どんぐりのひみつきち」(大阪市平野区・2027年4月開業予定/大阪市へ指定申請予定)は、看護師の代表が自社開発した業務システムを開業時から使う、重症心身障がい児専門の放課後等デイサービスです。目的はただひとつ、事務作業の時間を減らして、職員が子どもと向き合う時間を増やすこと。AIは主役ではなく、人の時間を子どもに返すための道具だと考えています。
なぜ看護師の代表が、業務システムを自分でつくったのか
代表の岡安は、保育園と重症心身障がい児施設で働いてきた看護師です。重症心身障がい児施設では、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアとあわせて、個別支援計画(お子さま一人ひとりの目標と支援内容をまとめた、いわば支援の設計図)の作成業務にも従事してきました。
そこで痛感したのが、福祉の現場の事務作業の多さです。日々の記録、計画書、報告書。どれも大切な仕事である一方、書類に向かう時間が増えるほど、子どものそばにいる時間は削られていきます。「子どものための書類なのに、書類のせいで子どもとの時間が減っていく」。この矛盾は、この業界で働く多くの人が感じている課題だと思います。
誰かが解決してくれるのを待つより、自分でつくってしまおう。そう考えた代表は、開業準備とあわせて業務システム「業務Hub」を自分の手で開発しました。どんぐりのひみつきちは、この仕組みを開業初日から使ってスタートする予定です。
自社開発「業務Hub」の3つの仕組み — 個別支援計画のAI原案・シフト・入浴管理
業務Hubには、大きく3つの仕組みがあります。それぞれが保護者の皆さまにとってどんな意味を持つのかと、あわせてご紹介します。
- 個別支援計画のAI原案づくり — こども家庭庁の参考様式に沿って、AIが計画の「たたき台」を用意します。職員が白紙から書類を書く時間を減らし、その分を「このお子さまには何が合うだろう」と考える時間や、実際に関わる時間にあてるためです。原案はあくまで下書きで、内容の検討と確定は児童発達支援管理責任者(支援計画に責任を持つ専門職)が行います。
- シフトの安全チェック — 医療的ケアのあるお子さまをお預かりするうえで、看護職員の配置は安全の土台です。業務Hubは、シフトが看護職員の配置基準を満たしているかを毎日自動でチェックし、人の目による確認を支えます。「今日は看護師さんがいる日かな」という不安を、体制と仕組みの両面から小さくしていきます。
- 入浴スケジュールの管理 — 「毎日おフロでさっぱり、あしたも元気。」どんぐりのひみつきちは、毎営業日の入浴を大切にしています。定員1日5名のお子さま全員がその日のうちに入浴できるよう割り当てを仕組みで管理し、人の記憶だけに頼らない運用にします。なお、入浴そのものは看護師と介助スタッフの2名体制で、入浴前のバイタルチェックを行ったうえで実施する計画です。
AIがやること、人がやること — 判断とケアは人が担います
AIという言葉が続きましたが、いちばんお伝えしたいのはここです。私たちは、AIと人の役割をはっきり分けています。
AIが担うこと
・書類の下書き(個別支援計画の原案など)
・シフトや入浴スケジュールの抜け漏れチェック
・事務作業の整理と時短
人が担うこと
・支援内容の判断と決定(最終確認はいつも人が行います)
・医療的ケアや入浴介助など、お子さまの身体に関わるケアのすべて
・遊び、声かけ、まなざし — お子さまとの関わりそのもの
・保護者の皆さまとの対話
AIがお子さまに触れることはありません。たんの吸引も、入浴前のバイタルチェックも、となりで一緒に笑うことも、担うのは人です。AIは事務室の中だけで働く、縁の下の道具です。
個人情報を守る設計 — お子さまの実名はAIに入力しません
便利さのために、お子さまの情報を危険にさらしては本末転倒です。業務Hubは、開発の最初の段階から「AIにお子さまの実名・住所・生年月日を入力しない」設計にしています。
- AIに渡す情報からは、個人を特定できる項目を除いています
- システム内では匿名のコードで管理し、どのコードがどのお子さまなのかは職員のみが把握します
- AIが扱うのは「支援に必要な内容」だけで、「誰であるか」は扱いません
AIの活用と個人情報の保護は、どちらかを選ぶものではなく、設計しだいで両立できると考えています。仕組みについてご不明な点があれば、見学の際に代表が直接ご説明します。
減らした事務時間は、子どもと向き合う時間へ
事務の時間が1時間減れば、職員がお子さまのそばにいられる時間が1時間増えます。私たちがAIに期待しているのは、結局のところ、それだけです。
増えた時間で、絵本をもう1冊読めます。スヌーズレン(光や音でゆったりリラックスする感覚あそび)をじっくり楽しめます。どんぐり探検隊の探検に、もう少しだけ付き合えます。「早く書類をやらなきゃ」と時計を気にする大人ではなく、目の前の子どもに集中できる大人がそばにいること。それが、この仕組みを通じて保護者の皆さまにお届けしたい価値です。
これは職員にとっても同じです。書類に追われない職場は、職員が心と体の余裕を持って働ける職場です。週休3日制(常勤は週4日×9時間)などの働き方の方針と業務HubによるAI活用は、「余裕のある大人こそが、よい支援ができる」という同じ考えから生まれています。
AIは万能ではないからこそ — 私たちの使い方
正直にお伝えすると、AIは間違えることがあります。だからこそ業務Hubでは、AIの仕事を「下書きと抜け漏れチェック」までに限定し、決定はいつも人が行う運用にしています。
AIを導入している放課後等デイサービスは、全国的にまだ少ないのが現状です。ただ、私たちは「先進的だから」AIを使うのではありません。子どもと向き合う時間を少しでも増やしたい — 理由はそれだけです。
代表がなぜ『残りの人生は、子どものために使おう』と決めたのか。その原点は「代表の想い」のページでご紹介しています。あわせてご覧いただけたらうれしいです。